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難しいアパレルのリサイクル、今後どうなるのか?

2024.07.02

【この記事は2024年7月5日に加筆・修正しました】

アパレルのリサイクルの現状

再び服に生まれ変わるのは1%未満

衣類のリサイクル状況はかなり深刻です。環境省の2022年データによると、国内で排出される不用衣類全体の約66%が焼却または埋め立て処分され、リサイクル用として回収されるのはわずか15%ほどです。しかも、その用途のほとんどがマットレスの詰め物や断熱材、掃除用のクロスで、最終的に新しい服に生まれ変わるのは1%未満です。
(環境省「環境省_サステナブルファッション」より)
(世界経済フォーラム「深刻化するファッション業界のごみ問題:解決策の一端がここにある」より)

アパレルのリサイクルが進みづらい理由

衣類のリサイクルがなかなか進まないのには、様々な理由があります。

①繊維のリサイクルは技術的に難しい
アパレル市場で最も需要がある繊維は、2種類以上の繊維を混ぜてつくる「混紡繊維」と呼ばれるもの。混紡繊維をリサイクルするには、混ざった個々の繊維を分離しなければなりません。しかし、品質を保ちながらの分離は技術的に難しいとされています。

②アパレルメーカーに対する規制が少ない
近年はあらゆるメーカーに対して、製造過程で出るごみを規制する動きが活発になってきています。しかしほかの業界と比べ、アパレルメーカーに対する規制圧力は少ないのが現状です。ただし、EU(欧州連合)では売れ残り衣料品の廃棄禁止を大筋合意しており、日本でも今後規制が入るかもしれません。

③従来のリサイクル製品の需要が低下
衣類をリサイクルしてつくられる軍手は、中国などで安く生産できるようになりました。工業用ウエス(機械類の汚れをふき取る布)も「使い捨て」が敬遠されはじめ、需要が低下しています。また、東南アジアに送られていた古着も、東南アジアの発展により以前より求められなくなっています。
(産経新聞「売れ残り衣料品の廃棄禁止をEU大筋合意、ユニクロなどファストファッション業界に影響」より)
(THE WALL STREET JOURNAL「古着リサイクルなぜ進まない? 新技術を模索する業界」より)

アパレル業界でリサイクルが注目されはじめた理由ー背景にある課題

近年はアップサイクルへの取り組みが増えるなど、アパレル分野のリサイクルが注目されています。(関連記事:「アップサイクルでサスティナブルなアパレル流通を目指す」)その理由の1つはもちろん、先に述べた「新しい服へのリサイクル率の低さ」です。そして、ほかにもいくつか理由があります。

行き場のない古着たち

古着は主に先進国で集められています。2016年にはアメリカから75万トン、ドイツから50万トン、イギリスから35万トン、日本から24万トンの古着が国外に輸出されています。しかし、このような古着の寄付には様々な問題が伴います。回収量が再利用できるレベルを上回っていたり、送られた古着が現地のニーズに合わないなど、結局ゴミとして焼却処分されるパターンも多く、うまく循環できていないのが現状です。

資源の大量消費

ジーンズ1本をつくるのに、1万リットル以上の水が必要といわれています。これは、ジーンズの主要素材である綿の栽培に、それだけ大量の水や肥料が使われるということです。また、合成繊維をつくるのであれば石油も必要になります。したがって、服をつくる過程では多くの資源が消費されているのです。

繊維の生産や使用に伴う環境負荷

フリースのジャケットやジム用のレギンスなど、合成繊維の服の人気は高まっています。しかし、合成繊維の生産は温室効果ガス排出を伴い、合成繊維の洗濯はマイクロプラスチックを海へ放出することにつながります。また、合成繊維に限らず、繊維の染色には化学物質が使用され、環境に悪影響を与えてしまいます。
(GNV「古着の寄付の裏側:アフリカでの現状とは?」より)
(THE WALL STREET JOURNAL「古着リサイクルなぜ進まない? 新技術を模索する業界」より)

アパレルのリサイクル事例

ほかの分野に比べリサイクルが進みづらいアパレル業界ですが、少しずつ事例も出てきています。

セイコーエプソン 繊維再生のリサイクル技術を開発へ

セイコーエプソンは、水を使わずに繊維をリサイクルできる独自の「ドライファイバーテクノロジー」を応用し、廃棄衣料リサイクルの社会実装へ向け、HKRITA(香港繊維アパレル研究開発センター)と共同開発契約を締結したことを発表しました。従来は再繊維化が難しかった廃棄衣料や工場の端材、売れ残りを再び繊維として活用することが可能となり、再生繊維の普及加速に大きく貢献することが期待されます。
(繊研新聞社「セイコーエプソンの独自乾式リサイクル技術 HKRITAと繊維産業に応用へ」より)
(EPSON「ドライファイバーテクノロジーを応用した繊維再生の新技術開発へ、HKRITAと協業」より)

サーキュラー・エコノミーを実現するファッションブランド「BRING」

BRINGは、「服から服をつくる」をテーマに、不要になった衣類のポリエステルを加工し、ファッションアイテムに再製品化する取り組みをしています。ポリエステルから再生ポリエステル樹脂を作り出す技術を生かし、Tシャツなどのプロダクトを再生産。再生素材をアパレルブランドに提供し、再利用の普及を図っています。

H&Mの布地リサイクルシステム「Looop」

「Looop」はH&M FoundationとHKRITA(香港繊維アパレル研究開発センター)、Novetex Textilesの協力により開発された、衣類から衣類へのリサイクルを可能にするシステムです。このシステムでは、複数の古着を分解して組み合わせ、新しい服を生み出す技術を使用しています。また、「Looop」はスウェーデンのH&M店舗内の衣服リサイクル工場にあり、消費者は持参した古着から新しい服に生まれ変わる瞬間を見ることができます。
(PR TIMES「H&M、リサイクルシステム「Looop」で不要な衣類を新たなファッションアイテムに変換」より)

アパレルのリサイクルは今後発展するのか

アップサイクルや新たなリサイクル技術の開発など、リサイクルへの取り組みは今後広がっていくと考えられます。そして、リユースについても注目度は高まっています。「ブランド品を除く衣類・服飾品」のリユース市場規模は2018年~2021年で20.9%増加しており、1,212 億円。リユース市場は新型コロナウイルスの影響により、2020年に一時的に停滞感が見られたものの、その後大きな伸びを示しています。リユース市場の拡大を見ると、リサイクル市場も今後大きく展開できるチャンスがあるのかもしれません。三陽商会やTSI「マーガレット・ハウエル」、ユニクロなどは回収した衣類をリセール(再販)する取り組みも始めています。
(環境省「令和3年度 リユース市場規模調査 報告書」より)
(リユース経済新聞「リユース業界の市場規模推計2023(2022年版)」より)
三陽商会「回収した衣料・雑貨のリユース品の販売を6/21(金)より開始

アパレルのリセールカンパニーFINE

国内のアパレル余剰在庫(新品の服)は年間15億点*。ただ、その後の流れはあまり明らかになっていません。自社でアウトレット再販をする場合もありますが、残念ながら廃棄処分されることもあります。
*小島ファッションマーケティングの調査による

売れ残った新品の服をバラバラに解体し、素材ごとに分けてリサイクルする方法は今後増えるかもしれません。しかし、FINEは服としての価値を活かす再販売に重点を置いています。役目を終えた後にリサイクルされる方が本来望ましいと考えるからです。

FINEはアパレル企業から買取した在庫を、ブランド毀損しない適切な方法で再販しています。余剰在庫を資源として再循環させ、必要な人に届けることに特化したアパレルのリセールカンパニーです。

EU(欧州連合)では、売れ残った服や靴などの衣料品の廃棄を禁じる法案が導入され、規制強化は世界に広がる可能性もあります。将来的にアパレルの在庫買取はスタンダードになるかもしれません。リサイクル市場もさらに拡大し、結果的にリサイクル課題の解決に近づくのではないでしょうか。

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