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社会
ファッション業界のゲームチェンジとなるか。欧州で進展する“循環型ファッション”
ファッション業界でサステナビリティの声が高まる近年。在庫を再び販売する二次流通市場や古着市場などが徐々に拡大し始め、衣料品廃棄の削減に努めるサステナブルなファッションビジネスが国内でも広がっています。
そんな中、環境保全への意識が高い欧州のアパレル産業では、サステイナビリティに対して現在どのように進化しているのでしょうか。欧州では、廃棄を資源に変え新たな価値として市場を巡る「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」が注目されはじめています。それに伴い、アパレル産業でもその動きが浸透しはじめ「サーキュラーファッション(循環型ファッション)」への取り組みが始まっているようです。
そこで今回は、欧州で展開される「循環型ファッションビジネス」について調べてみました。
循環型ファッションとは
循環型ファッションとは製品を廃棄するのではなく、新しい価値に変え製造したり消費者が利用したりすることで、永続的に生産〜消費まで循環していくことです。アパレル産業では、「リサイクル」「アップサイクル」「リユース」、また「レンタル」や「二次流通」などが、身近にある循環型ファッションとして広く認識されているのではないでしょうか。
欧州では現在、こうした従来より在る循環型の方法に加え、より環境負荷を軽減するために生産〜消費までの基準がさらに高くなっています。ファッションビジネスに関するコンサルタント企業『GREEN STRATEGY』によると、循環型ファッションの特徴は下記のように分類することができます。
1.生産過程での廃棄量を削減し、マテリアルリサイクルが可能に設計されていること
生産過程で出る廃材の量の抑制や、リサイクル可能な設計で製造されているかが重要となります。
2.素材の原料が非毒性で安全に生分解し、堆肥化されること
廃棄の埋め立て時に環境負荷を削減するために、生地の原料そのものが非毒性で安全に堆肥化されることが好ましいです。そのため、土壌の微生物などに害がなく、生物学的に栄養素となるような原料から製造されることも今後の課題です。
3.エネルギーを効率的かつ安全に使用し、生産および流通可能であること
風力や太陽光などの再生可能エネルギーを使用し、生産、輸入、販売されることも環境負荷削減を促進する一つの手段。流通全体を通じて、水やその他の原材料を効率的かつ安全に使用することが、持続可能性を高める要因となります。
4.衣服のレンタルやデッドストックの二次流通により、ユーザーの使用期間が延長されること
消費者間での衣服の交換や、ファッションレンタルを利用することなども、衣服の寿命を延長する方法として有効です。また、売れ残った在庫品(デッドストック)を低価格で再び販売する二次流通や、古着の消費による製品の使用期間の延長によって、廃棄量の削減が可能となります。
欧州の循環型ファッションビジネス
一度生産されたものを効率よくリサイクルし、再度市場へ流通させていく循環型ファッション。実際には生分解やリサイクルにおける様々な技術の進化が必要不可欠で、各企業も手法を模索していることでしょう。その中で、欧州でも注目される循環型ファッションビジネスの事例をご紹介します。
MUD Jeans
2012年にオランダでローンチしたデニムブランド。ジーンズを月額7.50ユーロ(日本円約900円程)でリースすることができ、返却されたものはリサイクルされ、再び別のユーザーにリースされます。リースで循環させる仕組みにより、廃棄の削減および製造時に使用する水の使用量の削減に努めています。また、リース契約時は無償修理サービスもあり、ユーザーがより長く使用できるように配慮されています。
Bethany Williams
ファッション業界でもサステイナビリティを重要視したデザイナー「ステラ・マッカートニー」に次ぐ、デザイナーブランドとして注目されています。リサイクル業者から買い付けたテント布の廃棄素材や、環境負荷の低いオーガニックテキスタイルを使用してデザインしたものを製造しています。また、社会性にも配慮した生産を重要視し、薬物リハビリテーションやホームレスシェルターの人々などと協働し製作を進めることで、雇用を生み出すことへも貢献しているのです。
循環型システムで目指すファッション業界の未来
既存のファッションビジネスモデルでは持続可能性に限界があると言われるなか、新しく生まれた循環型ファッション。世界中での認知は徐々に拡大してきています。
循環型への移行を加速させるための具体的な行動指針として、グローバルファッションアジェンダは、2017年に2020 Circular Fashion System Commitment(以下2020 Commitment)を提示し、行動を取るよう署名を呼びかけています。そのアクションとは下記の4つ。
1)リサイクル可能な設計戦略の実施
2)収集された使用済み衣類および履物の量を増やす
3)使用済みの衣服と転売された靴の量を増やす
4)リサイクルされた使用済み繊維から作られた衣服と履き物のシェアを増やす
このアクションに対する署名は、2019年7月の時点で目標の21%を達成。署名企業の中にはアディダスやインディテックス、H&Mなどが含まれ、大手企業も循環型のシステム促進への意識は高まってきています。今後は、以上の4つのアクションに加え、業界の変化に伴った経済的で効果的な基準が加えられていくとされています。
循環型ファッションへの移行は難関ですが、課題を一つずつ認識し解決への道筋を立てて行き、より倫理的で環境負荷が少ない業界へ変化していくのではないでしょうか。
執筆=峰松 裕子
編集=中原 愛海
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