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ダイナミックプライシングはアパレル業界にも定着するのか?

2019.06.10

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは、需給バランスに応じて価格を変動させることです。需要が集中する季節・時間帯は価格を高く、需要が減少する季節・時間帯は安くして、最終的な収益の最大化を図ります。これまでは、主に航空券・ホテルで導入されていました。

近年、ダイナミックプライシングに注目が集まる背景にあるのは、AI(人工知能)の発達。過去の販売実績データなどをAIが学習することで売れ行きを予測し、算出した最適価格をシステムがレコメンドする仕組みが整ったのです。ダイナミックプライシングを専門に扱う株式会社ダイナミックプライシングテクノロジー(2019年2月創業)※リンクのようなスタートアップ企業も登場しました。

このように、いま注目されているダイナミックプライシング。すでに導入した企業の事例を紹介していきます。

ダイナミックプライシング事例

Airbnb

Airbnbは、空き部屋を自分で設定した価格でシェアするサービス。しかし、一般人が時期や競争力などを考慮して適切な価格を設定し、利益を最大化することは難しいです。そこで、Airbnbはホストの希望条件に加え、時期や近隣の物件の状況、イベント情報などさまざまな状況に応じて適切価格を推奨する機能「スマートプライシング」を提供しています。
(GIGAZINE「Airbnbが常に適正な価格を設定する「スマートプライシング」のために取り入れている仕組み」より)

J1リーグ横浜FM

横浜F・マリノス(横浜FM)は、収容観客数の多い日産スタジアムと、少ないニッパツ三ツ沢競技場をホームグラウンドとして使用しています。日産スタジアムは席が埋まりにくく、三ツ沢競技場はすぐに満員になるため、一定以上の収益を得にくい課題がありました。これを背景に、横浜FMは2019年シーズンからダイナミックプライシングの全面導入を決定。あくまで推計ですが、従来より観客数とチケット収入は7~8%増加する見込みです。
(日経クロストレンド「自由席を3倍値上げ 19年は「価格変動制」の波が各業界を襲う」より)

akippa

駐車場予約アプリakippa(あきっぱ)でも、AIを活用したダイナミックプライシングを導入。イベント会場など混雑するエリアや人気スポットを抽出し、周辺の駐車場価格を操作しています。将来的には、すべての駐車場価格の自動管理を目指しているそうです。実証実験では売上が10~20%増加したようで、駐車場オーナーの収益最大化が狙えるでしょう。
(note・akippa広報「思わず誰かに話したくなるakippaの裏側「ダイナミックプライシング」のお話。」より)

StockX

実店舗ではありませんが、アパレルのダイナミックプライシング事例もあります。
StockXは”時価”で売買するストックマーケット型のスニーカーECサイト。商品ページには時系列の値動きが見られるチャートや、買い手・売り手双方の入札価格が表示されており、株の売買の仕組みと似ています。現在はスニーカーだけでなく、バッグや時計、そして服にもこの形式を拡大しています。

希少性のあるスニーカーやバッグは、ダイナミックプライシングが比較的受け入れられやすいのかもしれません。しかし、季節に合わなくなるにつれ定価から値下げする方式が確立された服は、受け入れられづらい懸念がありました。そんななかでStockXが売買アイテムに服を取り入れたのは、アパレル業界のダイナミックプライシング導入の先駆けといえるのかもしれません。
(note・大西 理「eコマースの新潮流がダイナミックプライシングに向かうとするなら何を考えていくべきか」より)

大手小売業にも広がるダイナミックプライシング

経済産業省の「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」

経済産業省は、2025年までにコンビニ大手5社の商品に電子タグ(RFID)をつける「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表しました。チップとアンテナが内蔵された電子タグによって、決済や在庫管理を簡便化するためです。

さらに、電子タグは個品管理できて賞味期限や消費期限と紐づけられるため、残り1時間で廃棄になってしまうときに自動で値下げするのも可能になります。そのため、食品ロス削減や人手不足解消にも繋がります。
(YAHOO! JAPANニュース「経済産業省 コンビニ電子タグ1000億枚宣言は実現可能か プロジェクトトップランナーのローソンに聞く」より)

ビックカメラ

家電量販店ビックカメラは、2020年度末をめどにダイナミックプライシングの全店導入を決定しました。価格をデジタル表示する電子ペーパーを全商品に設置し、店頭価格を本部から一括変更できるようにします。

ダイナミックプライシング導入に踏み切った理由は、Amazonなどのネット通販に追随して頻繁に価格変更回数が増えたものの、人手で対応するのに限界を感じたため。また、高価な家電の場合は店舗に出向いて実物を見る顧客は多いですが、すぐに購入には至りません。スマホを開いて店頭価格とネット通販の価格を比較し、後者が安ければ店舗では購入しない場合もあります。ダイナミックプライシングによって店頭価格を機動的に変更できなければ、機会損失になるかもしれないのです。
(日本経済新聞「家電の価格、随時上げ下げ ビックカメラが「電子棚札」」より)

ダイナミックプライシングは大手アパレルにも広まる見通し

アパレルECのStockXの事例、コンビニや家電量販店などの大手小売のダイナミックプライシング導入。これらによって、実店舗を全国展開する大手アパレルにも、ダイナミックプライシング導入の可能性が見えてきました。メルカリなどの二次流通の世界で、「定価でない、状況に合わせた価格設定」とすでに向き合っている私たち。この流れで、きっとアパレル業界のダイナミックプライシングも進んでいくのでしょう。

(ライター:中原 愛海)

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