服に関わる人たちがより豊かになれるファインマガジン
社会
服に関わるすべての人が幸せであるための、フェアトレードという考え方
フェアトレードとは?
フェアトレードを直訳すると「公平・公正な貿易」。発展途上国から原料や製品を適正価格で購入し、立場の弱い生産者の生活改善・自立を貿易を通して目指す活動をいいます。
今はモノが安く手に入る便利な世の中になりましたが、その安さを生み出すために、生産者の生活や環境が犠牲になっていることがあります。たとえば、正当な対価が生産者に支払われなかったり、生産力向上のために多量の農薬が使用され環境が破壊されたり、小さな子どもでも働かされたり……。
フェアトレードというと、その対象はコーヒー豆やカカオ豆がイメージされやすいのかもしれません。しかし、アパレル業界でもフェアトレードは非常に注目されています。それは、とある悲惨な事故がきっかけでした。
アパレル業界でフェアトレードが叫ばれはじめたきっかけ「ラナ・プラザ崩落事故」
Image by: rijans
「ラナ・プラザ崩落事故」とは
2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊の商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落しました。「ラナ・プラザ」には5つの縫製工場が入居していました。死者1,127人、負傷者2,500人以上にもおよぶ「ファッション史上最悪」とも呼ばれる事故でした。
事故前日、従業員らはビルに亀裂を発見し、地元警察も検査のための退去命令を出していました。ところが、ビルのオーナーはそれを無視。さらに、工場のマネージャーは「仕事に戻らなければ解雇の可能性がある」と従業員に話していたといいます。
そして翌日の午前9時頃、停電とともにビルの上層部に設置された発電機が稼働。発電機の振動と数千台のミシンの振動が連動し、崩壊を誘発しました。発電機が設置されていたビルの上層部は、違法に増築されていたそうです。
アパレル業界の在り方が問われるように
バングラデシュではアパレル産業が輸出の80%を占めており、国を支える重要な産業となっています。しかし、その労働環境は非常に劣悪なものであったことが、「ラナ・プラザ崩落事故」をきっかけに明らかになりました。
そしてその背景には、先進国のファストファッションメーカー・ブランドが服を安く大量生産するために、バングラデシュをはじめ発展途上国の安価な労働力に依存している事実がありました。
こうして、アパレル業界でも「その取引は生産者にとって不利益でないか」というフェアトレードの観点が、アパレルメーカー・ブランドおよび消費者にとって重要な判断軸となっていきました。そして、アパレル業界に、さまざまなフェアトレードの活動事例が生まれました。
(FASHIONSNAP.COM「ファッション史上最悪の事故から5年、バングラデシュは変わったのか」より)
フェアトレードに取り組むアパレル事例
ピープル・ツリー
「ピープル・ツリー」はフェアトレードの服や雑貨、お菓子などを販売する、フェアトレード専門ブランドです。「毎日の暮らしに物語を」をテーマに、一つ一つの商品の背景にあるつくり手の想いや、ものづくりの在り方を大切にしています。
No Nasties
「No Nasties」は、フェアトレード&オーガニックコットン100%のファッションブランドです。「30分に1人のインドの農民が自殺を強いられている」という悲惨な現状を解決するため、インドでエシカルファッションのムーブメントを起こすのを目指しています。
パタゴニア
「ラナ・プラザ崩落事故」の翌年、パタゴニアは米国のフェアトレード認証団体とパートナーシップを締結。工場から製品を購入する際、団体が輸出価格に基づいて決めた「プレミア価格」を工場に直接支払ってきました。そのお金は賃金などの生産コストとは別に、「追加の賞与」という形で生産者に配分されています。
服に関わるすべての人が幸せな世の中を目指して
フェアトレードに関連して、近年は「エシカル」「サスティナブル」を重要視する動きも活発になっています。いずれにせよ、豊かな生活の裏に不幸になっている人がいないか、日常の中で想像力を働かせることが大切になっているのではないでしょうか。服に関わるすべての人が幸せな状態で、服が循環していく世の中を目指していきたいです。
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