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フードロス削減にもつながる、食品廃棄から生まれる“次世代の繊維”とは!?

2019.12.11

新たな繊維技術で資源枯渇も救う

ファッション産業が、全産業で2番目に環境汚染に影響を与えているのをご存知でしょうか?たとえば、ジーンズ1本あたりに使用されるコットンの栽培や染色には、1万リットル以上の水が必要とされます。ジーンズ以外にも多くの衣類に使用される、コットンなどの繊維素材。水をはじめとする資源の枯渇を促進する可能性があり、ファッション産業の課題となっています。

そこで近年、リサイクルコットンなどの“リサイクル素材”が着目されるようになってきています。フードロス削減にもつながるとして近年話題になっているのが、食品廃棄物から再生された繊維素材。どのような種類があり、ビジネスとして実用化を進めているのか解説します。

食品廃棄から生まれ変わる繊維

H&Mのサステイナブルラインであるコンシャス・エクスクルーシブ。そこで紹介されたオレンジやパイナップルの皮から作られた衣服が話題になりました。

食品廃棄物から繊維を生成する技術は一見先進的ですが、実は植物繊維を生成する手法は1960年代からあるようです。近年では、食品廃棄から生成された繊維とリサイクルされた衣料品の繊維の組み合わせにより、耐久性などの機能面が進化しています。そのため、より実用的に用いられはじめたのではないでしょうか。

循環型の新しい繊維ビジネス

食品廃棄から生まれた繊維を活用するビジネスについて、欧米を中心にご紹介します。

QMILK

QMILKは、牛乳の乳タンパク質を用いてシルクのような肌触りの繊維を開発しました。生地には18種類のアミノ酸が含まれており、体温調整や血液循環など身体の健康にまで作用する機能性を持ち合わせています。天然の抗菌効果と高い親水性により、繊維製品に付加価値も提供します。また、廃棄する際には生物分解され堆肥化も可能です。

Orange Fiber

Orange Fiberは、通常廃棄となる大量のオレンジのセルロースから生成されています。質感はシルクのようで、光沢のある生地から透け感のある生地まで作ることが可能です。企業が繊維を普及するにあたり目指しているのは、Luxuary3.0。それは、持続可能な繊維でつくられた商品の価値を高め、新たなラグジュアリーとして提供していくこと。そして、人々がその製品を着用することで、消費に限らず持続可能な社会貢献までおこなえるよう支援しています。

Agraloop Biofiber

Agraloop Bio-Refineryは、食品廃棄物を繊維に変換する独自のシステムを確立している、非常に画期的な企業です。パイナップルの葉やバナナの木の幹、サトウキビの樹皮だけでなく、油糧種子麻や油糧種子亜麻、稲わらなど、さまざまな資源を活用し繊維へと生成。多様な食物に対応することで、資源を効率的に循環させています。

Pinatex

Pinatexは、パイナップルの成分を活用し生成される繊維です。フィリピンで不織布メッシュに加工された後、スペインで仕上げ加工が施されます。柔軟性がありながらも、耐久性に優れた繊維でつくられた生地は、衣類のみでなくインテリアやフットウェアにも活用されています。また、パイナップル農家の農業コミュニティを広げ、より持続可能にしていくための取り組みにも注力しています。

次世代繊維ビジネス展開の事例

食品廃棄から生成された繊維は、機能面やコスト面でも実用可能です。

現時点で、Orange FiberやPinatexなどは、H&Mなどのファストファッションからフェラガモなどのラグジュアリーブランドまで、幅広いアパレル企業で活用事例があります。また、今回ご紹介していない、海藻からつくられるSeaCellという繊維は、ヨガウェアで有名なLululemonなどとコラボレーションを実現させています。

サステナビリティがビジネスの持続性をも左右するといわれている今、徐々に代替素材へ移行する動きを見せる企業も増加しているようです。

繊維で変革するファッション産業

食品廃棄の課題解決とともに繊維市場が新たな方向へ開拓されれば、環境負荷に対する取り組みもより加速するでしょう。また、廃棄となる食品を無駄にせず価値に変えて循環すれば、フードロス対策にもつながります。農家にとっても余剰の収益を生みだし、経済的に持続可能性を高めることが可能ではないでしょうか。ファッション産業が与える環境や社会課題は、根底となるこうした繊維ビジネスの変革にも命運がかかってきているようです。

 

執筆=峰松 裕子
編集=中原 愛海

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