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アパレル業界のAI活用はどこまで進んでいる? 感性と共存するファッションの未来

2025.10.29

アパレル業界のAI導入、その現状とこれから

AIの活用は多くの業界で進んでおり、小売や製造の現場ではデータ分析や自動化によって業務の効率化を実現する企業が増えています。
一方で、アパレル業界でのAI導入はまだ限定的で、活用企業は全体の約3割にとどまっているという調査もあります。その背景には、AIを活用できる人材の不足や、導入後の運用・定着の難しさといった課題があります。アパレル業界はトレンド変化が早く、デザインや購買判断など“人の感覚”が大きく影響する業界です。天候やSNSの流行といった外的要因にも左右されやすく、データ化やモデル化が難しいことも導入のハードルを高めています。
そうした中でも、AIを活用して成果を上げている企業も増えています。調査では、導入企業の7割以上が業務効率化や生産性の向上を実感しており、特にデザインや商品企画など、これまで“感性”や”発想力”に頼ってきた領域で生成AIの活用が進んでいます。

これからアパレル業界に求められるのは、AIを効率化の手段としてだけでなく、“人の感性とどう組み合わせていくか”という視点です。AIと人、それぞれの強みを生かした共創こそが、新しい価値を生み出す鍵となります。

(sitateru「【ニュースレター】アパレル業界の生成AI活用に関するアンケート調査 他業界と比べて導入率は穏やかな一方、業界特性が生むユニークな活用」より)

AIが得意とする領域と、その活用事例

AIは大量のデータを分析し、パターンを見つけ出すことを得意としています。そのため、アパレル業界でも“勘や経験”に頼ってきた判断や、データ分析の効率化が進みつつあります。ここではAIが特に力を発揮している4つの領域と、その活用事例を紹介します。

・SNS解析によるトレンド予測

AIは画像解析によってSNS上の膨大な投稿からデータを収集し、トレンドの兆しをいち早く捉えることができます。株式会社NEWROPEが提供する「#CBK forecast(カブキフォーキャスト)」は、SNS上の投稿をAIで解析し、ファッショントレンドや需要の変化を可視化するツールです。ブランドや小売企業は、このデータをもとに、MD計画の精度向上やマークダウン時期の判断、ターゲット設定などの戦略立案に活用しています。

・在庫・生産の最適化、MD計画の効率化

AIは販売実績や在庫データをもとに、売れ筋や在庫リスクを予測するのが得意です。「FULL KAITEN」は、EC・店舗・倉庫すべての在庫データをAIで予測・分析する在庫最適化ツールです。業務負荷を軽減しながら、今ある在庫で粗利を最大化する仕組みを提供しています。

・消費者行動分析、レコメンド提案

AIはユーザーの閲覧履歴や購入傾向などの行動データを学習し、個々の好みに合わせた商品やスタイリングを自動で提案できます。ユニクロが展開する「UNIQLO IQ」は、AIを活用したチャットボット型の買い物アシスタントです。ユーザーの好みや購入履歴に基づいて商品を提案するほか、配送状況の確認や返品方法の案内など、購入前後のサポートまで一貫して行います。

・デザイン生成やスタイリングシミュレーション

生成AIの登場により、AIが画像をもとに新しいデザインやスタイリングを提案することも可能になりました。「WEAR by ZOZO」では、1,400万件超の投稿データと「似合う」に関するAI・スタイリストの知見をもとに、ユーザーの好みや体型に合わせた着回し提案を実現しています。AIによるスタイリング提案が、よりパーソナライズされたファッション体験を支えています。

 

AIは、データ分析や業務の効率化では高い精度を発揮しますが、アパレル分野ではまだ課題も多く残っています。「なぜそれが良いと感じるのか」といった感覚的な判断や、トレンドの“雰囲気”のような言葉にしづらい要素、新しい価値観をゼロから生み出す部分は、AIだけでは再現が難しいところです。そのため、AIの力を活かしながら、人の感性とどう組み合わせていくかが今後の課題といえるでしょう。

AIだけでは表現できない、ファッションの”感覚”

ファッションは決まった答えがないからこそ、個性や感性が生き、表現の幅が広がります。素材の手触りやシルエットのわずかな違い、着たときのバランスなどの感覚的な部分は数値では判断しきれません。また、デザインに込められたストーリーや、販売スタッフが顧客との会話から提案するスタイリングなど、人の経験や感覚が生む価値も少なくありません。こうした「感覚の積み重ね」から生まれる表現や提案は、AIだけではまだ再現が難しい領域といえます。

AIと人の感性が生み出す、新しいファッションのかたち

AIは、過去のデータをもとに「今の延長線上にある正解」を導き出すことを得意としているため、需要予測や在庫管理、業務効率化といった領域では、すでに欠かせない存在になりつつあります。

また、AIの導入は人の役割を減らすためではなく、感性を活かす仕事に時間を使えるようにするための手段でもあります。分析や定型業務をAIに任せることで、デザイナーや販売スタッフはより“創ること”や“伝えること”に集中できるようになります。

さらに近年では、AIが“感性”の領域にも関わり始めています。OpenFashion社が主催する「TOKYO AI Fashion Week」では、デザイナーがテーマやコンセプトを設計し、AIがそのアイデアをもとにビジュアルを生成します。人が考えるストーリーや美意識と、AIの生成力が融合することで、これまでにない表現が生まれています。

これからのアパレル業界に求められるのは、AIの分析力や生成力を活かしながら、人の感性による判断や発想をどう重ねていくか。AIと人、それぞれの強みを掛け合わせたところに、次のファッションの可能性が広がっていくのではないでしょうか。

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