アパレル事業へ参入する異業種企業の国内事例をご紹介

近年「ニトリ」や「オートバックス」をはじめとした異業種からのアパレル事業参入が目立っています。異業種参入は、事業拡大の可能性や多角化企業としてブランディングできるというメリットがあります。
しかし同時に、失敗すると利益を上げている事業を圧迫するリスクを抱えることにもなります。アパレル事業は既存市場の中でも競合が激しい、いわゆる“レッドオーシャン”です。
企業にとってアパレル事業はそのリスクを乗り越えるほど魅力的に映るのでしょうか？
今記事では、アパレル事業に参入する企業の事例をご紹介します。

異業種からアパレル事業へ参入した大手事例

オートバックスがガレージウエアを展開

カー用品店の最大手チェーン「オートバックス」が展開するガレージ・ライフスタイルブランド「ゴードン ミラー（GORDON MILLER）」は今年（2019年）、アパレル事業をスタートしました。
街でも着られるファッション性を兼ね揃えていることはもちろん、洗車中に着ることを想定し、撥水（はっすい）素材を使っていたり、ボタンにラバー素材を採用するなどの工夫で愛車を傷つけない設計になっています。

車好きにライフスタイルの１つとしてファッションを提案する目的の他、アパレルを通して車の魅力に気づいてもらうという狙いがあるようです。

（WWD『オートバックスがアパレル事業を本格化　“街着としても着れるガレージウエア”を提案』より）

家具業界のユニクロ「ニトリ」のアパレル戦略は？

アパレル業界では当たり前となったSPAをインテリア業界で実現する「ニトリ」も、アパレル事業へ参入。2017年の発表当初は大々的なニュースになりました。
現在、関東に4店舗展開しています。（2019年10月現在）
ブランド名は「N＋（エヌプラス）」。
店内にはニトリブランドをイメージできるようなポップやアイコンはなく、公式サイトにもニトリのブランドアイコンはありません。
店舗が実際にありながら、今後のビジネス展開やブランディングなどもまだ見えてきていない状態です。
しかし、ニトリは国内500店舗以上を展開し、32年連続増収増益を達成する小売業界の雄とも言える存在です。
『衣食住』のうちの『衣』と『住』を埋めたニトリの今度の戦略や展開に注目が集まっています。

本業として抱える事業の間口を広げるためのアパレル参入も

大手の事業参入ばかり目立ちますが、本業のイメージアップや間口を広げるためのアパレル参入事例もあります。

養鶏農家がニワトリをブランドアイコンにTシャツを販売

沖縄県うるま市の養鶏農家「徳森養鶏場」がアパレルブランドを作って、現地の養鶏場やインターネット上で販売。ブランド名を「ニワトリ」とし、ブランドアイコンもニワトリにして若年層へ訴求しています。アパレルから人出不足や高齢化に喘ぐ養鶏や農業のことをもっと知ってもらおうという試みで、事業というより本事業への寄与に近い形です。

（沖縄タイムズ 『ケッコーなデザイン　養鶏農家がアパレル参入　「ニワトリ」をブランドに』）

#タピ活を広めた水道会社が次はイメージアップのアパレル参入

水道会社「オアシスソリューション」もアパレル企業に参入。オアシスソリューションと言えば、2013年にタピオカドリンク専門店・春水堂（チュンスイタン）を国内にオープンさせたことで有名です。言わばタピオカブームの火付け役。
事業にとらわれず、新しい試みにトライする気質で優秀な人材を集める企業が挑戦したのは“スーツに見える作業着”の開発です。
本事業で若手技術職を採用できない悩みに対して、まずは企業イメージを良くしようと作業着のリニューアルからはじめたそうです。これが取引先の目に留まり、外販に至りました。グループ内にアパレル会社を立ち上げECサイトで販売すると大ヒット。発売１年で売上１億を突破するヒット商品へと成長しました。

（日経クロストレンド 『水道工事会社が「スーツに見える作業着」でアパレル事業に進出』）

異業種参入で見えるのはライフスタイル提案型の多角ビジネス？

衣食住、そして仕事はわたしたちの生活の中にあり、自己を構築するものの１つ。
『服』は “日常”でありながら大きな“自己表現”を可能とするジャンルです。アパレルに参入することで、よりブランドを身近に感じてもらい本事業の広がりや存在感を強める目的もあるのでしょう。
無印良品をはじめ、あらゆるライフシーンで同じブランドが登場するということは実際に珍しくなくなってきています。ブランドにとってアパレルは非常に魅力的かつ、可能性の大きい事業なのかもしれません。